1. 災害エスノグラフィーの目的
  2. 災害対応における暗黙知の重要性
  3. 災害エスノグラフィーの調査方法
  4. 調査における留意点
  5. 災害エスノグラフィーの調査実例
 
 
 
 
 

2.災害対応における暗黙知の重要性

災害研究をやっている専門の方たちは、災害とはこういうものだ、こういうことが起こる、情報が大事だ、こういう壊れた方をするのだと、無意識のうちにあるステレオタイプを持っています。我々が阪神淡路大震災のときに非常に強く感じたことは、今まで自分たちが持っていた、こんなものなのだろうという思い込みは一切捨てなければいけない、そこからもう一度この阪神淡路大震災をきちんと学ばなければいけないということでした。

震災のあと、大阪ガスの方にお話を伺いました。報告書を見ると、ガス管の被害は1キロメートルあたり中圧管では何か所、高圧管では何か所、あるいは日数によってどの地域が復旧したかというデータはきれいにまとめられています。ところが、ガス管すべてに水道水が入っていて、その水を抜かなければガスが通せないので、1本1本ガス管を地上に引っ張りだして水を抜く、この作業がガスの復旧で一番つらかったというお話を伺いました。3か月かかった復旧と言われてもあまりピンと来なかったのですが、そのときに初めて地震災害時のガス復旧にどういう手間がかかるのか、現場でどんなことが起きるのかということを理解しました。

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